銀行や保険会社の販売員に、老後資金の準備には外貨建て変額年金保険が良いですよと勧められたことはありませんか?
一見すると、資産運用しながら保障も得られる一石二鳥の商品に思えますが、実際に契約した人の中には想定以上の手数料に驚いた、思ったほど保障が手厚くないと後悔する声も少なくありません。
そもそも外貨建て変額年金保険は、割高な投資信託と中途半端な保険を組み合わせた商品であり、資産形成を目的とする投資初心者にとって最適とは言えません。
さらに、生命保険料控除のメリットも限定的で、iDeCoや新NISAと比べると大きく見劣りします。
この記事では、外貨建て変額年金保険の仕組みやデメリットをわかりやすく整理し、代わりに活用すべき制度や賢い資産形成の方法を解説します。
この保険本当に必要なのか?と疑問に思っている方は、ぜひ最後まで読んで判断材料にしてください。
外貨建て変額年金保険の仕組みとは?
外貨建て変額年金保険は、その名の通り外貨で運用する変額型の年金保険です。
仕組みを大きく分けると、投資部分と保険部分の二つから成り立っています。
まず投資部分について。
契約者が支払う保険料の一部は、米ドルや豪ドルなどの外貨建てで投資信託に回されます。
これにより、運用成果次第で将来受け取る年金額や解約返戻金が変動します。
つまり、元本が保証されていない点が特徴で、為替相場の変動によって円換算した受取額が増える可能性もあれば、逆に減るリスクもあります。
特に円高局面では受取額が大きく目減りするため、為替リスクを常に抱えている点を理解する必要があります。
次に保険部分について。
外貨建て変額年金保険には、死亡時や高度障害になった場合の最低限の保障が付いています。
ただし、この保障はあくまでおまけ程度で、一般的な定期保険や終身保険のように手厚い内容ではありません。
死亡時に払込保険料相当額が戻るといった程度で、十分な保障とは言えないのが実態です。
さらに重要なのがコスト構造です。
外貨建て変額年金保険では、投資信託部分にかかる信託報酬に加え、保険関係費用や事務手数料などが差し引かれます。
これらを合計すると実質コストは年2〜3%に達することもあり、長期運用ではリターンを大きく削る要因になります。
まとめると、外貨建て変額年金保険の仕組みは、外貨で運用される投資信託と最低限の保障を付けた保険の組み合わせです。
一見メリットがあるように見えて、実際は高コストかつリスクも高い商品であり、資産形成を目的とする投資初心者にとっては慎重な判断が必要です。
問題点① 本質は割高な投資信託+中途半端な保険
外貨建て変額年金保険の最大の問題は、その本質が高コストの投資信託と保障が薄い保険を組み合わせただけの商品である点です。
まず投資信託として見た場合、通常のインデックスファンドであれば信託報酬は年0.1〜0.2%程度と非常に低コストで運用できます。
しかし外貨建て変額年金保険の場合、投資信託部分の信託報酬に加えて、保険関係費用や事務コストなどが上乗せされるため、実質コストは年2〜3%に達することも珍しくありません。
長期で運用するほど、この高コストは複利効果を大きく削り、資産形成を妨げる要因となります。
次に保険としての側面を見てみましょう。
外貨建て変額年金保険には、死亡時や高度障害時に最低限の保障があると説明されますが、その内容は非常に限定的です。
例えば払い込んだ保険料相当額が外貨で戻る程度であり、家族の生活を守れるほどの十分な保障とは言えません。
つまり、保障を重視する人にとっては物足りず、資産運用を重視する人にとってはコストが高すぎるという、中途半端な商品になってしまっているのです。
結局のところ、外貨建て変額年金保険は投資と保険のいいとこ取りではなく、投資と保険の悪い部分を掛け合わせたものと言えます。
投資であれば低コストな新NISAやiDeCoを活用した方が合理的であり、保険であれば掛け捨て型で必要な保障だけを確保する方が効率的です。
にもかかわらず、外貨建て変額年金保険はその両方を中途半端に提供しているため、コスト面・保障面ともにメリットが薄いのが実態です。
つまり、契約者にメリットが無いという事は、保険会社や販売員側にメリットがあるという訳です。
問題点② 生命保険料控除のメリットも限定的
外貨建て変額年金保険を勧められる際によく強調されるのが、生命保険料控除を受けられるという点です。
確かに、この商品は生命保険料控除の対象となるため、支払った保険料の一部が所得控除として認められます。
しかし実際のところ、その節税効果は非常に限定的です。
まず、生命保険料控除の上限を確認してみましょう。
一般生命保険料控除の最大控除額は所得税で年間4万円、住民税で2万8千円です。
つまり、いくら多額の保険料を支払っても、この金額以上に税金が安くなることはありません。
例えば課税所得が20%の人なら、年間で最大8,000円程度の節税にしかならない計算です。
老後資金を目的に長期間で数百万円を払い込む商品の割に、この程度のメリットでは費用対効果が見合いません。
一方で、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用すれば掛金全額が所得控除となります。
毎月2万円を拠出すれば年間24万円が所得控除され、その分だけ税金が軽減されます。
課税所得が20%の人なら年間4万8千円、30%の人なら年間7万2千円もの節税効果が得られるのです。
また、新NISAを活用すれば投資による利益がすべて非課税となり、長期的に大きな差が生まれます。
つまり、節税を目的にするなら外貨建て変額年金保険を選ぶ理由は無いのです。
生命保険料控除はおまけのような制度にすぎず、あくまで必要な保障を確保する際に副次的に利用するものです。
資産形成を真剣に考えるのであれば、掛金全額控除があるiDeCoや、投資利益が非課税の新NISAを優先的に活用すべきでしょう。
結果として、外貨建て変額年金保険における生命保険料控除のメリットは小さな節税効果でしかなく、投資信託や保険の高コストを補えるほどの魅力はありません。
問題点③ 保険は掛け捨てで十分
外貨建て変額年金保険を検討する人の多くは、投資と保険を同時に確保できるなら効率的では?と考えがちです。
しかし実際のところ、資産形成と保障は切り離して考えるのが鉄則です。
なぜなら、保険は万一のリスクに備えるための最低限の保障で十分だからです。
本来の保険の役割は、残された家族の生活を守るための死亡保障や、病気やケガの際に経済的破綻をしない様に備える医療保障といったリスクヘッジ(損失回避)にあります。
そのために最適なのは、低コストでシンプルな掛け捨て保険です。
例えば定期保険なら、同じ保険料で数千万円単位の保障を確保できます。
しかも、定期保険が必要な人は結婚して子供がまだ小さい、或いは残された家族が経済的に破綻する可能性がある場合のみで、独身や資産を蓄えた高齢者などには全く必要ありません。
つまり、終身保険などと言うような無駄な保障期間ではなく、ライフスタイルに合った必要な期間だけ保険に加入し、役割を終えたら解約すれば良いため無駄な支出を抑えることができます。
一方、外貨建て変額年金保険のように保険と投資を組み合わせた商品は、どちらの役割も中途半端です。
死亡保障は限定的で家族を十分に守れる内容ではなく、投資としては手数料が高いためリターンを大きく削られます。
結果として、保障は薄いのに保険料は高い、投資リターンも見劣りするという、誰にとっても効率が悪い選択肢になりやすいのです。
さらに注意すべきは、対象者が限られる点です。
外貨建て変額年金保険は、一括又は長期間の保険料払込を前提としているため、収入が安定していて長く契約を続けられる人でなければ途中解約のリスクがあります。
途中で解約すると、運用次第で解約返戻金が元本割れするケースも多く、結果的に保険にもならず投資にもならなかったという後悔につながりかねません。
問題点④ 販売員の強引な勧誘による消費者トラブルの多発
外貨建て変額年金保険は、その複雑な仕組みから消費者トラブルが多い商品としても知られています。
特に銀行や保険会社の販売において、老後資金を増やせます、保障と資産形成を両立できますといったセールストークで強引に契約を迫られるケースが後を絶ちません。
金融庁の発表によると、外貨建て保険に関する苦情や相談件数は過去年々増加傾向にありました。
その多くは、手数料や為替リスクの説明が不十分だった、元本保証だと思って契約したのに損失が出たといった内容です。
販売員がインセンティブ目的やノルマ達成のために商品を推奨する一方で、顧客にとって不利な点を曖昧にしたまま契約が進められることが大きな問題です。
また、高齢者に対する販売も目立ちます。
銀行に預けておくより増えますよと言われて契約したものの、外貨運用による為替変動で円換算すると元本割れし、必要な時に資金を取り崩せなかったという相談も数多く寄せられています。
金融知識が乏しい人ほど、人の良さそうな販売員におすすめされたから安心と誤解しやすく、その結果、老後資金を減らしてしまう深刻な事態に陥るのです。
さらに厄介なのは、外貨建て変額年金保険が長期契約であるため、一度契約すると解約しづらい点です。
途中解約すれば運用次第で大きく元本割れすることもあり、勧められるまま契約したけれど続けられないと後悔しても取り戻せないケースが多発しています。
このように、販売員の強引な勧誘によるトラブルは、外貨建て変額年金保険の大きなリスクのひとつです。
投資初心者が選ぶべき本当に有効な制度
外貨建て変額年金保険の問題点を整理すると、高コストでリターンが削られる、保障は中途半端、節税効果も小さい、販売トラブルが多いという構造的な欠陥が浮かび上がります。
では、資産形成を目指す投資初心者は何を選ぶべきなのでしょうか?
答えはシンプルで、資産形成は投資制度、保障は掛け捨て保険と分けて考えることです。
まず、資産形成の王道は iDeCo(個人型確定拠出年金) です。
最大の魅力は、掛金全額が所得控除になるという点で、節税効果は外貨建て変額年金保険の比ではありません。
毎月の掛金は将来の年金資産として投資され、運用益も非課税。
さらに受取時も一定の控除があるため、トータルで大きな節税効果を享受できます。
長期的にコツコツ積み立てることで、投資初心者でも安定的な資産形成が可能です。
批判的な人の中には、60歳まで取り崩せないじゃないか、若年層には突然の支出もあり資金の自由度が無いと言う人も多いです。
しかし、そもそもiDeCoは老後資金の年金制度であり、短期で売買する事が目的ではありません。
その点で言えば、外貨建て変額年金保険と考え方は一緒です。
仮に、外貨建て変額年金保険を低い目標額を早期に達成させ次の契約に繋げたいとの思惑があれば別ですが、それは手数料目当ての企業側による都合の良い理屈ですから、契約者には何のメリットもありません。
次に注目すべきは 新NISA(少額投資非課税制度) です。
こちらはiDeCoと違って掛金の制約がなく、いつでも引き出せる柔軟性が魅力です。
年間投資枠の範囲内で購入した株式や投資信託の利益がすべて非課税になるため、長期で運用するほど大きなリターンを得やすくなります。
特にインデックスファンドを低コストで積み立てる方法は、初心者が最も取り組みやすい投資法といえるでしょう。
つまり、わざわざ高コストの外貨建て変額年金保険で運用益を狙う必要は無く、保障の付いた運用などと言う詐欺的口車に乗せられて契約する必要などありません。
一方、保障については掛け捨て型の保険を必要最小限に活用するのが賢明です。
例えば、万一の際に家族を守るための死亡保障は定期保険で十分確保できますし、医療リスクに備えるならシンプルな医療保険で最低限をカバーすれば良いのです。
保障はあくまでリスクヘッジであり、資産形成とは分けて考えるべきものです。
これらを混同させて消費者を騙しに来る販売員は、見た目が良い人そうでも決してあなたの事を考えていません。
まとめ
いかがでしたか?
外貨建て変額年金保険は、一見すると投資と保障を同時に備えられる便利な商品のように見えます。
そんな商品を、一見すると人が良さそうな販売員だった、これまでの付き合いがあるからなどと正当化して契約した挙句、大事な資産を減らす人が後を絶ちません。
しかし、この記事で解説してきた通り、その本質は割高な投資信託と中途半端な保険を組み合わせただけの商品であり、資産形成や保障の観点からは非常に効率が悪いことが分かります。
さらに、生命保険料控除のメリットも限定的で、販売員による強引な勧誘や消費者トラブルのリスクも少なくありません。
結論として、外貨建て変額年金保険は本当に必要な人は極めて限定的であり、投資初心者や資産形成を効率よく進めたい人にとっては必要ありません。
資産形成は低コスト・非課税制度を活用し、保障は掛け捨て保険でシンプルに備える。
これこそが、失敗しない資産形成の最短ルートと言えるでしょう。
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