「できるだけリスクを取らずに、資産を増やしたい」
投資を始めた人のほとんどが、最初にそう思います。
しかし現実は、世の中に出回る投資情報の多くがリスクを取らずに儲かる方法を強調しすぎています。
そしてその考え方こそが、資産形成で遠回りする最大の原因です。
投資の世界には、昔から変わらない鉄則があります。
それは、リスクを取らなければリターンも増えないということ。
この当たり前の現実を、理論として明確に示したのがCAPM(資本資産価格モデル)です。
CAPMは、リスク(β)に応じて期待リターンが決まるという考え方であり、投資初心者が必ず一度は理解すべき重要なモデルです。
この記事ではCAPMをできるだけ難しい数式を使わずに、なぜリスクを取らずに儲けるのは難しいのか、そして資産形成において、どのように活かすべきなのかを分かりやすく解説します。
読み終わる頃には、投資の迷いが消え、どんな投資を選ぶべきかが論理的に判断できるようになります。
CAPMとは?
CAPM(資本資産価格モデル)とは、投資におけるリスクとリターンの関係を理論的に説明した代表的なモデルです。
CAPMの考え方は非常にシンプルで、資産の期待リターンは、その資産がどれだけ市場全体の値動きに連動するかによって決まるというものです。
ここで重要になる指標がβ(ベータ)です。
βは市場全体が上昇・下落したときに、対象の資産がどれくらい同じ方向に動くかを示す数値であり、βが1なら市場と同程度、βが2なら市場の2倍の値動き、βが0.5なら市場の半分の値動きになります。
CAPMでは、期待リターンは無リスク利子率+β×(市場リターン−無リスク利子率)で表されます。
つまり、リスクが高い(βが高い)資産ほど期待リターンは大きくなり、逆にリスクが低い資産ほどリターンも小さくなるという考え方です。
この理論が示す最大のポイントは、リスクを取らずに高い利益を得ることは理論上難しいという現実です。
資産形成においては、短期的な値動きを避けながらも、長期投資と分散投資によって市場リスクを受け入れ、合理的にリターンを狙うことが重要だといえます。
CAPMは資産形成にどう役立つのか?
投資初心者の多くは、できるだけ安全にできるだけ大きく増やしたいと考えますが、CAPMはその発想が現実的に難しいことを示します。
CAPMでは、期待リターンは市場全体の値動きに対する感応度であるβによって決まるとされ、βが高いほど価格変動リスクは大きくなる一方で、期待リターンも高くなると考えられています。
つまり、高い利益を狙うなら、ある程度の市場リスクを受け入れる必要があるということです。
この考え方を理解することで、資産形成におけるうまい話やリスクゼロで高利回りといった投資案件が、理論的に不自然であることを見抜けるようになります。
またCAPMは、インデックス投資の有効性を裏付ける理論としても重要です。
市場平均のリターンを得るには、市場全体のリスクを引き受ける必要があり、その最も効率的な方法が分散されたインデックスファンドへの長期投資です。
短期的な値動きに振り回されず、市場リスクを時間と分散で抑えながら資産を増やすという戦略は、CAPMの理論と一致します。
結果としてCAPMは、感覚ではなく理論に基づいて投資判断を行い、長期的に安定した資産形成を目指すための強力な指針となります。
CAPMが教える資産形成で一番危険な考え方
CAPMが教える資産形成で一番危険な考え方は、ズバリこれです。
リスクを取らずにハイリターンを得られるはずだという発想です。
CAPMでは、投資の期待リターンはβ(市場リスク)に比例して決まると考えます。
つまり、市場の値動きに連動するリスクを取らなければ、基本的に高いリターンは得られません。
逆に言えば、リスクが小さい資産は期待リターンも小さくなるのが自然です。
にもかかわらず多くの初心者は、安全で確実で、しかも儲かる投資を探してしまいます。
そしてこの思考こそが、資産形成を遠回りさせる最大の原因になります。
なぜなら、市場ではローリスク・ハイリターンの商品が存在すると、投資家が殺到して価格が上昇し、結果として利回りが低下してしまうためです。
つまり、そのようなおいしい投資は理論的に長く残りません。
それでもリスクゼロで儲かる話を追いかけると、最終的にたどり着くのは、投資詐欺・高額情報商材・危険なレバレッジ商品などです。
CAPMが示す結論はシンプルです。
儲けたいなら、リスクを取るしかない。
資産形成で成功するために必要なのは、リスクを避けることではなく、リスクを理解し、長期・分散でコントロールすることなのです。
CAPMの弱点(盲信すると危険)
CAPMの弱点の1つ目は、投資家が合理的に行動することを前提としている点です。
実際の市場では、人は恐怖や欲望に左右されやすく、暴落時に投げ売りしたり、バブル時に過熱して買いすぎたりします。
市場は理論通りではなく、感情で大きく歪みます。
2つ目の弱点は、CAPMがリスクをβ(市場リスク)だけで測っている点です。
しかし現実には、企業の不祥事、業界の衰退、為替変動、金利変化など、株価に影響するリスクは無数に存在します。
βが低いから安全とは限らず、βが高いから必ず儲かるわけでもありません。
3つ目は、CAPMが想定する市場ポートフォリオが現実には完全に存在しないことです。
本来CAPMでは、株式だけでなく債券、不動産、コモディティなどあらゆる資産を含めた市場全体が基準になります。
しかし現実の投資家は、その完全な市場ポートフォリオを再現できません。
さらにCAPMは、短期の価格変動やバブル・暴落の発生を説明するのが苦手です。
市場が異常に割高になったり、逆に恐怖で過剰に売られたりする状況では、CAPMの期待リターンはほとんど役に立ちません。
つまりCAPMは、投資の基本原理を理解する上では非常に有効ですが、未来の値動きを予測する万能ツールではありません。
資産形成では、CAPMを土台として活用しつつも、現実の市場は理論通りに動かないという前提で、分散と長期視点を持つことが重要です。
まとめ
いかがでしたか?
CAPMは、投資の世界における最も重要な現実、つまりリスクとリターンは表裏一体であるという原則を明確に示してくれる理論です。
期待リターンは、βと呼ばれる市場リスクの大きさによって決まり、βが高い資産ほど値動きは大きくなる一方で、期待リターンも高くなると考えられています。
これは裏を返せば、リスクを取らずに高い利益を得ることは理論上成立しにくいということです。
このCAPMの考え方を理解すると、投資初心者が陥りやすい、安全に儲けたい、元本保証で高利回りが欲しいといった危険な思考を避けられるようになります。
CAPMが教えてくれる結論はシンプルです。
資産を増やすには、市場リスクを理解し、受け入れた上でコントロールすることが必要。
この現実を知ることこそが、資産形成の第一歩になります。
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