将来の年金だけでは安心できない──
そう感じている人は年々増えています。
実際、老後資金の不足額は2,000万円問題として社会的な関心を集めて以来、国の制度改革や企業年金制度の見直しが進んでいます。
その中でも特に注目されているのが企業型DC(確定拠出年金)とiDeCo(個人型確定拠出年金)を併用する戦略です。
2025年現在、この2つの制度は税制面で大幅に優遇されており、正しく活用すれば節税と資産形成を同時に叶えることが可能です。
この記事では、最新の税制を踏まえながら、企業型DCとiDeCoを併用した最強の老後資金戦略を、初心者にもわかりやすく解説します。
あなたの老後資金は自分で育てると言う力を今ここで身につけましょう。
企業型DCとiDeCoの基本を理解
まず押さえておきたいのは、企業型DCとiDeCoはどちらも確定拠出年金という同じ仕組みの上に成り立つ制度だということです。
確定拠出年金とは、加入者自身が拠出金(積立金)を運用し、その成果によって将来受け取る年金額が決まる仕組みのことです。
国が保障する公的年金とは異なり、自分で増やす自助努力型年金と言えます。
企業型DC(企業型確定拠出年金)は、勤務先の企業が制度を導入し、会社が掛金を拠出するものです。
従業員は用意された投資商品から運用先を選び、将来の受け取り額を形成していきます。
拠出金は全額非課税で、運用益も非課税、受け取る際も退職所得控除や公的年金等控除が適用されるという税制優遇があります。
企業によってはマッチング拠出といって、社員自身も追加で掛金を出せる制度を設けているケースもあります。
一方、iDeCo(個人型確定拠出年金)は、個人が自分で申し込み、自分の意思で積み立てを行う制度です。
こちらも拠出金が全額所得控除となり、課税所得を圧縮できる点が最大のメリットです。
運用益は非課税で、受け取り時には所得控除が適用されます。
つまり、企業型DCとiDeCoの共通点は積立・運用・受取の3段階で税制優遇があることになります。
違いは、拠出主体が企業か個人かという点です。
企業型DCは会社が制度を導入していなければ利用できませんが、iDeCoは基本的に誰でも加入可能です。
両者を上手に使い分けることで、老後資金を税金に強い形で育てることができます。
2025年10月時点の最新税制改正ポイント
以下は、2025年10月時点で発表されている、iDeCoおよび 企業型DCに関する主な最新の税制改正ポイントです。
将来の資産形成戦略を立てる際の重要な情報となるため、併用や運用を検討されている方はぜひチェックしてください。
掛金上限額の大幅な引き上げ
iDeCoの掛金上限額が、従来よりも大きく引き上げられる見通しです。
例えば、国民年金第1号被保険者(自営業・フリーランス等)は月額約6.8万円 → 月額約7.5万円へ。
第2号被保険者(会社員・公務員)で企業年金制度(企業型DC/確定給付年金など)を持たない場合:月額2.3万円 → 月額約6.2万円へ。
第2号被保険者で企業年金制度を既に持っている場合でも、iDeCo + 企業型DCの合算枠が月額6.2万円程度になる見込みです。
企業型DC自体の拠出限度額も見直し対象となっており、iDeCoとの併用を前提にした設計変更が想定されています。
加入可能年齢の拡大(iDeCo)
iDeCoについて、これまで原則65歳未満までが拠出加入可能年齢でしたが、2025年度以降、70歳未満まで加入・拠出できる制度拡大案が出ています。
これにより、60代後半で働いている方や定年延長・継続雇用の方も、より長期間にわたって老後資産の形成・拠出が可能になる可能性があります。
受取時の控除・税制の見直し:5年ルール→10年ルール
これまで、iDeCoの一時金受け取り後に退職金を受け取る場合、5年を空ければ双方で退職所得控除を満額活用できるという5年ルールが存在しました。
改正案では、この空ける期間が10年に延長される方向です。
つまり、iDeCoの一時金を受けてから会社の退職金を受け取るまで10年以上空けないと、退職所得控除の適用が縮小される可能性があります。
受取のタイミングや方法(年金形式/一時金形式)によって、税負担が大きく変わるため、受け取り計画を早めに立てることが重要です。
マッチング拠出等の制度設計の自由度が向上
企業型DCにおけるマッチング拠出(企業が掛金を出している制度で、従業員が追加掛金を出せる仕組み)の、加入者側掛金の上限や企業担保ルールの緩和が見込まれています。
これにより、企業型DC+iDeCoの併用を前提とした制度設計が勤務先で導入しやすくなる可能性があります。
企業型DC×iDeCoを併用する3つのメリット
企業型DCとiDeCoは、それぞれ単体でも強力な老後資金制度ですが、2025年現在の税制改正を踏まえると、両者を併用することで節税・運用・分散の3つの面で圧倒的なメリットを得ることができます。
ここでは、その代表的な3つを解説します。
節税効果が倍増する
企業型DCの掛金は会社が拠出するため、従業員の給与として課税されません。
一方、iDeCoは自分で拠出した掛金が全額所得控除の対象になります。
つまり、iDeCoに拠出した分だけ課税所得が減り、所得税・住民税が軽減されるというわけです。
2025年の税制改正でiDeCoの上限額が月6.2万円程度まで拡大する見込みのため、より大きな節税効果が狙えます。
会社の制度を利用しつつ、自分でも拠出できるダブル非課税の状態を作れるのが最大の強みです。
運用の自由度と分散効果が高まる
企業型DCは会社が用意した運用商品の中から選ぶため、ラインナップが限られるのが難点です。
しかし、iDeCoを併用すれば、個人の裁量で幅広い投資信託を選べるため、より自分の投資スタイルに合った運用が可能になります。
たとえば企業型DCで安定重視の国内債券を、iDeCoで成長重視の米国株式インデックスを選ぶなど、目的別に資産を分けて運用できます。
これにより、リスク分散とリターン最大化の両立が期待できます。
老後資金の積立総額を大幅に増やせる
企業型DCだけでは拠出額に限界がありますが、iDeCoを併用すれば企業+個人の両面から資金を積み上げることができます。
長期で見るとこの差は非常に大きく、例えば毎月6万円を30年間積み立て、年利3%で運用した場合の運用資産は約3,500万円に達します。
これを企業拠出分と合わせることで、退職金や公的年金だけでは補えない老後資産の柱を構築できます。
注意点と落とし穴
企業型DCとiDeCoを併用することで節税・運用・分散のメリットを得られますが、一方で制度を理解せずに始めると損をする落とし穴も存在します。
2025年の税制改正を踏まえた最新の注意点を整理しておきましょう。
掛金の上限を超えると税優遇の対象外になる
2025年10月現在、iDeCoの拠出限度額は職業区分や企業年金の有無によって変わります。
特に企業型DCと併用する場合、両方の掛金を合算した上限(月6.2万円程度)を超えると、その超過分は税制優遇の対象外です。
勤務先によってはiDeCoの加入を制限しているケースもあるため、まずは自分の会社がどの制度区分に該当するのかを確認することが重要です。
受取時の10年ルールに注意
これまでの5年ルールでは、iDeCoの一時金を受け取ってから5年以上経てば退職金を別途受け取っても控除が重複できました。
しかし、2025年度以降はこの期間が10年に延長される改正案が出ています。
もしiDeCoの受取と退職金の受取が近い時期になると、退職所得控除の一部が使えず、課税額が増える恐れがあります。
老後資金を最大限活かすためには、受け取りの時期をずらすなど計画的な対応が求められます。
運用リスクを軽視しない
企業型DCやiDeCoの運用はあくまで自己責任です。
元本保証型を選べば安全ですが、インフレリスクや運用益の機会損失も発生します。
一方で投資信託などを選べば、値動きにより一時的に資産が減少するリスクもあります。制度の目的は長期的な資産形成であり、短期の値動きに一喜一憂せず、リスクを許容できる範囲で運用商品を選ぶことがポイントです。
途中引き出しができない
iDeCoの最大のデメリットは、原則60歳まで積立金を引き出せない点です。
急な出費に対応できないため、生活費や緊急資金とは別に長期資金として考える必要があります。
企業型DCについても同様で、転職・退職時には移換手続き(ポータビリティ)を忘れると、自動的に国民年金基金連合会に送金されてしまい、運用できない放置資産になるリスクがあります。
手数料・運用商品の質にも差がある
iDeCoは金融機関ごとに口座管理手数料が異なり、運用商品の信託報酬(運用コスト)にも差があります。
特に長期積立では、手数料の差が最終的な資産額に大きく影響するため、低コストのインデックス型商品を中心に選ぶのが基本です。
モデルケース:20年間での資産形成試算
ここでは、企業型DCとiDeCoを併用した場合に、どのくらい老後資産を形成できるのかを、2025年10月時点の税制と想定利回りをもとにシミュレーションしてみましょう。
前提条件
- 年齢:35歳(会社員)
- 運用期間:20年間(55歳まで)
- 企業型DC掛金:月額20,000円(企業拠出)
- iDeCo掛金:月額20,000円(自己拠出)
- 運用利回り:年3%(複利運用)
- 税制優遇:iDeCo掛金分は全額所得控除(所得税・住民税合計30%と仮定)
試算①:純粋な積立+運用効果
企業型DCとiDeCoそれぞれに月2万円ずつ、合計4万円を20年間積み立てた場合の結果です。
| 区分 | 月額拠出 | 積立期間 | 想定利回り | 最終積立額(元本) | 運用益 | 総資産額 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 企業型DC | 20,000円 | 20年 | 年3% | 480万円 | 約166万円 | 約646万円 |
| iDeCo | 20,000円 | 20年 | 年3% | 480万円 | 約166万円 | 約646万円 |
| 合計 | 40,000円 | 20年 | 年3% | 960万円 | 約332万円 | 約1,292万円 |
つまり、同じ利回りで運用した場合でも、20年間で約1,300万円近い老後資金を形成できます。
試算②:節税効果を加味した実質リターン
iDeCoの掛金(月2万円)は全額所得控除となるため、所得税・住民税が30%の人なら、年間で約7.2万円の節税効果があります。
20年間継続すると、節税額だけで約144万円にもなります。
この節税分を再投資に回すと、実質的な総資産額は次のように増加します。
1,292万円(運用資産)+144万円(節税効果)=実質約1,436万円
試算③:上限拡大後(2025年改正後)に月6万円拠出した場合
2025年の税制改正でiDeCoの掛金上限が拡大(企業型DCとの合算で月6.2万円)した場合、
例えば企業型DC 2万円+iDeCo 4万円で20年間積立したケース。
元本:1,440万円
運用益:約500万円
節税効果:約288万円
総資産額:約2,228万円
まとめ
いかがでしたか?
2025年10月時点の最新税制改正を踏まえると、企業型DCとiDeCoを併用することで、節税・運用・資産形成の効果を最大化できます。
その一方で、掛金上限や受取タイミングの制約、運用リスクや引き出し不可などの注意点も存在するため、自分の職業区分や勤務先制度を確認したうえで上限内で拠出し、リスク分散を意識した運用商品を選び、受取計画を立てつつ緊急資金やライフプランと併せて検討する必要があります。
必要に応じてFPや税理士、社会保険労務士に相談することで、税制優遇を最大限活かした最強の老後資金戦略を今から着実に構築することが重要です。
併せて読みたい:

