今回のテーマは、投資を始めた人の多くが経験する、含み損を見た瞬間に売りたくなるあの感情です。
頭では長期投資が大事と分かっていても、値下がりを目の当たりにすると手が勝手に売却ボタンに伸びてしまう──
これは決してあなたの意志が弱いからではありません。
実はこの行動の裏には、人間が本能的に持つ損失回避バイアスや、短期的な価格変動に過剰反応する脳のクセが深く関係しています。
行動経済学では、こうした心理の働きが投資判断をゆがめ、資産形成のチャンスを逃す大きな原因になるとされています。
本記事では、投資初心者が陥りやすい売りたくなる心理の正体を解説し、その衝動をコントロールするための3つの実践的対策を紹介します。
この記事を読み終えるころには、含み損を見ても慌てずに冷静な判断ができる投資メンタルが身についているはずです。
売りたくなる心理の正体
投資初心者が含み損を見た瞬間に売りたい!と感じるのは、偶然でも気のせいでもなく、人間の脳の仕組みに深く根ざしています。
行動経済学では、この現象の背景にある代表的な要因として損失回避バイアスが挙げられます。
これは、同じ金額の利益よりも損失のほうを約2倍強く感じる心理傾向で、人間が進化の過程で身につけた生存戦略の一種です。
たとえば、1万円の利益を得たときの喜びより、1万円の損失を出したときの悔しさや不安のほうが強烈に心に残ります。
投資ではこれが含み損=危険という本能的な認識につながり、今すぐ逃げろという衝動を生み出します。
さらに、この心理には確証バイアスも加わります。
人は一度売ったほうがいいかもと思うと、その考えを裏付ける情報ばかりを探し、反対の情報を無視する傾向があります。
ニュースやSNSの悲観的な情報が、売りたい気持ちを一層強めるのです。
加えて、初心者ほど短期的な価格変動に意識が集中しやすく、長期的な成長や企業価値といった本質的な要素よりも、その日の株価の上下に振り回されがちです。
これは、行動経済学でいう現在バイアスによるもので、目先の変化を過大評価してしまう心理的クセです。
つまり、売りたくなる心理は、損失回避バイアス・確証バイアス・現在バイアスといった複数の心理作用が重なって生まれるものです。
これは投資の才能や経験不足の問題ではなく、人間なら誰でも持っている脳の特性です。
重要なのは、この衝動を自分の弱さと責めるのではなく、脳のクセとして理解し、客観的に対処する視点を持つことです。
損切りを早まる3つの原因
投資初心者が含み損を抱えたとき、まだ耐えるべき局面であっても早々に損切りしてしまうのは、冷静な判断力が欠けているからではありません。
多くの場合、人間が持つ心理バイアスが無意識に働き、意思決定をゆがめているのです。
上記にも記したその代表的な3つの要因を掘り下げましょう。
① 損失回避バイアス
行動経済学の基礎理論のひとつで、人は同じ金額の利益よりも損失を約2倍強く感じる心理的傾向があります。
1万円の利益よりも1万円の損失のほうがはるかに心に響くため、これ以上減らすくらいなら今のうちに売ってしまおうと考えてしまうのです。
このバイアスは短期的な価格下落に過剰反応し、長期投資の機会を奪う最大の要因となります。
② 確証バイアス
一度この銘柄は下がりそうだと思い込むと、その考えを裏付ける情報ばかりを探し、反対意見を無視してしまう傾向です。
たとえば、値下がり時に暴落予兆といった記事やSNSの投稿ばかりをチェックし、さらに不安を増幅させます。
その結果、本来はホールドすべき局面で損切りを選んでしまいます。
③ 現在バイアス
今の出来事や感情を過大評価し、将来の利益や損失を軽視してしまう心理傾向です。
株価の一時的な下落が、あたかも永遠に続くかのように錯覚し、将来の回復や企業価値の成長を冷静に見られなくなります。
特に初心者は長期視点の経験が少ないため、このバイアスに強く影響されます。
投資初心者が取るべき3つの対策
売りたくなる心理や損切りを早まる原因は、投資の才能や経験不足の問題ではなく、人間が共通して持つ脳のクセです。
したがって、克服するには心理を消すのではなく、心理に左右されにくい環境や仕組みを整えることが重要です。
ここでは、初心者でもすぐ実践できる3つの対策を紹介します。
① 投資ルールを事前に紙に書き出す
行動経済学では、感情が高ぶっているときほど合理的判断が難しくなるとされます。
含み損を見て慌てる前に、含み損が○%以内ならホールド、決算が悪化しない限り売らないなど、自分なりのルールを紙に書いておきましょう。
視覚化することで、感情的判断を抑える効果があります。
② 株価ではなく企業価値で判断する
初心者は株価チャートの上下動に振り回されがちですが、長期投資本来の判断基準は企業の業績や成長性、配当政策などのファンダメンタルズです。
短期的な価格変動よりも、ビジネスモデルや将来性に目を向けることで、売りたくなる衝動を減らせます。
③ ポートフォリオ分散で心理負担を軽減
1銘柄への集中投資は、含み損の影響を心理的にも大きくします。
複数の銘柄や資産クラス(株・債券・REITなど)に分散することで、一時的な下落局面でも冷静さを保ちやすくなります。
また、定期的に資産配分を見直すリバランスも有効です。
まとめ
いかがでしたか?
新NISA損切り民などと言う言葉があるように、投資初心者ほど含み損時のマインドが未成熟です。
長期投資に大事なのは、テクニックでも知識でもありません。
時間とマインドです。
SNS等で素人インフルエンサーが語る専門性の無い情報で分かった気になって本質を見誤る投資家は、どんなに頑張っても資産形成を達成するのは難しいのかもしれません。
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