- 相互関税の更なる悪化は?
- 株安・債券安・通貨安への警戒
- トランプ大統領の本音は○○○
相互関税導入を90日間延期発表
2025年4月10日未明、トランプ大統領は中国を除く75か国に対する追加関税を90日間延期すると発表しました。
全ての国に対しての10%関税は維持されたものの、これまでほぼすべての材料がネガティブ要因とされた米国株にとってポジティブサプライズとなり急騰しました。
主要指数も-20%を超えるなど完全な弱気相場入りした事や、どのテクニカルにおいても売られ過ぎのシグナルを出していながら自律反発が出来なかった株式市場は歓喜に沸き立ちました。
なぜなら、世界的な景気減速が心配される中、追加関税の延期は市場にとって大きな安心材料となったからです。
過去数カ月にわたって株価に大きな下げ圧力をかけてきた関税問題が一定期間後退することで、多くの投資家は一安心した事でしょう。
米国も、それまで株安・債券安・通貨安のトリプル安で米国経済そのものが危ぶまれていただけに、トランプ大統領も株式市場を意識した決断であることを否定しませんでした。
対中関税をより強化
しかし、直後には一転して対中関税を145%にまで上げると発表された事で投資家は再び大きな動揺と共に株式市場は混乱しました。
中国への強気な関税措置は、既にアナウンスされており投資家も織り込んでいました。
中国からの輸入品に対する関税を104%から125%に引き上げると発表していましたが、その後、ホワイトハウスは関税をさらに145%に引き上げると発表しました。
この予想外の追加関税により、投資家の間で不安が広がり株式市場は大きく下落したのです。
だが、一部の投資家には、中国への追加関税という材料が直接の引き金とはいえ、過去の大規模な関税発動と比べればインパクトは限定的で、「ここまで下がるのか?」という疑問の声があります。
実際、今回の関税(125%→145%)は範囲も規模も抑えられており、それ自体が米国経済へ重大な打撃を与えるような内容ではありませんでした。
しかし市場が大きく動いた背景には、関税そのものの経済的インパクトよりも、「市場心理の悪化」や「複数の悪材料の同時発生」によるセンチメントの急変が影響しています。
まず、トランプ前大統領による突然の関税強化は、数値以上に「再び米中関係が悪化する可能性」を示すメッセージとして受け取られました。
さらに中国も報復関税で応戦し、貿易摩擦の再燃という不安が増幅します。
実際、中国は最初の関税発言以降、表向きには一貫して強気の姿勢を崩していません。
その結果、特に半導体などグローバル企業を中心に売りが広がりました。
加えて、今回の悪材料が入ったことで、リスクオフの巻き戻しが一気に進み、下落が加速しました。
総じて、今回の下落は経済的な実害よりも、「想定外の政治的動き」と「センチメントの悪化」、そして「タイミングの悪さ」が重なった結果と言えます。
投資家は今後どうすれば良い?
今後の市場見通しは慎重なものとなりますが、決して悲観一色ではありません。
今回の急落は、米中間の貿易摩擦再燃や関税引き上げによるセンチメント悪化が主因であり、現時点で企業業績や米国経済のファンダメンタルズ自体に大きな変調があるわけではないため、落ち着きを取り戻せば反発の可能性も十分あります。
まず注目されるのは米中関係の今後です。
今回の関税引き上げは中国と本格的なディールと言うトランプ大統領の本音が隠されています。
トランプ関税については以前の記事でも記した通りです。
もし中国側が対話や交渉を模索する姿勢を見せたり、米国が段階的な譲歩を行えば、再び市場は安心感を取り戻すでしょう。
また、関税発動後経済への影響が明らかにされ、市場が一定の混乱を経て織り込みを進めれば、再び上昇トレンドに戻る余地はあります。
加えて、経済指標の結果次第では、FRB(米連邦準備制度理事会)による年内の利下げ期待が再び高まり、株式市場の下支えとなる可能性があります。
投資家の間でも、6月のFOMC(米連邦公開市場委員会)で0.25%利下げの確率が約6割と、6月以降に順次利下げされると予想しています。
一方で、リスク要因も無視できません。
米中関係以外にも、中東の地政学リスク、国内の政治不安など、外的要因が重なれば再びボラティリティの高い相場になり、トランプ関税後の注意以外にも警戒が必要です。
また、インフレの理解を誤る事でのFRBの失策や過度な利下げ期待が裏切られた場合には、再び下方向への圧力がかかる展開も考えられます。
関税発動によるインフレの真実とは?
関税引き上げがもたらす影響は、主に「コストプッシュインフレ」に関連しています。
このタイプのインフレは、原材料や製造コストが上昇することによって、企業が価格を引き上げることから発生します。
特に関税が増えると、輸入品のコストが高くなり、そのコストは最終的に消費者に転嫁されるため物価が上昇します。
コストプッシュインフレは、需要過多によるインフレとは異なり、消費者の需要が急増することなく、供給側のコストが上がることによって物価が上昇する点が特徴です。
この状況では、利下げが支持される可能性が高いです。
なぜなら、コストプッシュインフレが進行しても、それは経済成長を加速させるものではなく、むしろ消費者にとっては購買力を圧迫し、消費が減少する要因となるからです。
このような状況では、中央銀行は金利を上げるのではなく、景気刺激策として利下げを選択することが一般的です。
特に、経済成長が鈍化し、インフレの一因が供給側の問題に起因する場合、利下げは有効な手段とされます。
また、米国のような大きな消費市場では、関税が引き上げられると消費者物価が上昇するものの、消費者の購買力が低下します。
これにより、消費が鈍化し、景気が後退する恐れが高まります。
このような状況下では、FRB(米連邦準備制度理事会)が利下げを行い、経済成長を支える必要が出てきます。
特に、コストプッシュインフレが強まり、消費者物価が上昇し続ける中で需要が弱くなっている場合、利下げによって消費を刺激し、経済活動を回復させることが期待されます。
しかし、主流派経済学者やその経済学を元に誤った知識で発言する者などは、皆一様に「インフレ=利上げ」の間違いを流布し続けています。
日本が代表のように、自国の経済を破壊してでも間違った主流派経済学に傾倒し政策を決定するような愚行を犯すなど米国では考えられませんが、多くのエリート層では経済学の過ちを未だ認められずにいる者も少なくありません。
そのため、トランプ政権の今後やFRBの姿勢が正しいものであるかを注視しながら、先行き不透明な下落相場を耐えるしかありません。
まとめ
いかがでしたか?
投資家のポジションが極端に悲観に傾いているタイミングでポジティブ材料が出ると、ショートカバーが入りやすく、上昇の勢いが増します。
特に、重要イベント後に悪くなかったという評価だけでも、安心感から反発するケースも多く見られます。
総じて、強い上昇を生むには不安が解消されただけでなく、「安心できる理由」が明確に示されることが鍵です。
市場が総悲観に傾いている今こそ、ポジティブサプライズが起きた時の反動は大きくなる可能性があります。
今はトランプ関税の動向が最重要で、関税撤回、或いは関税実行など明暗分かれる情報に多くの投資家は踊らされる事でしょう。