「なぜ日本ではイノベーションが生まれないのか?」
多くの識者が教育改革・規制緩和・スタートアップ支援などを掲げてきましたが、いまだに根本的な変化は見られません。
それもそのはずで、これらの理論は全て間違っており、識者と呼ばれている発信者も実は本質を全く理解していません。
多くのビジネスパーソンや研究者が抱くこの疑問には、単なる精神論や教育の問題では片付けられない根深い構造的な背景があります。
実際、日本には優秀な人材も豊富な資金もあります。
それでも、GAFAのような世界的スタートアップが生まれにくく、基礎研究の成果がビジネスに結びつかない現実が続いています。
本記事では、よくある精神論や多様性不足といった表面的な説明ではなく、日本のイノベーションを阻む本質的・構造的な5つの要因に焦点を当てて徹底解説します。
あなたの中のなんとなくのモヤモヤが、この記事でクリアになるかもしれません。
イノベーションが起きない本質的な理由とは?
日本ではイノベーションが起きない・出遅れているといった声が多く聞かれます。
その原因として、文化的に保守的・挑戦を許さない社会・起業が少ないといった通説がよく語られます。
しかし、こうした表層的な議論では本質には迫れません。
その制度的・構造的な本質的要因を掘り下げて解説します。
イノベーションの実態は大企業主導が多数
イノベーション=スタートアップ発と考えられがちですが、実際には日本の多くの技術革新は大企業主導で行われてきました。
例えば、パナソニックやトヨタ、NTTの研究開発部門では、10年以上先を見据えた長期的な基礎研究が日常的に行われています。
リチウムイオン電池、光ファイバー通信技術、次世代半導体など、世界をリードした技術は、大企業による多額の資金投下と時間をかけた積み重ねの成果です。
このように、大企業は内部留保や長期雇用を背景に、短期的収益に縛られず基礎研究を継続できる体力を持っています。
一方で、スタートアップや中小企業は、企業保持による短期の資金繰りや収益が最優先となるため、成果の不確実な基礎研究にリソースを割くのは現実的に難しいのです。
しかし、世間で言われている主な意見として、大企業は保守的で立場しか考えておらず、逆にスタートアップ企業はトップダウンで次々とイノベーションを巻き起こしている、と言った嘘などがあります。
そもそも、革新的な技術が生まれるのは大抵年単位の研究が必要であり、その間膨大な赤字が発生します。
加えて、資本主義社会における合理的思考ともかけ離れており、体力の無い中小企業が進んで何年も赤字を受け入れて研究・開発を続けると言う考え方が現実離れしています。
スタートアップの多くは大企業出身の知見に依存
近年注目されるスタートアップですが、その多くは大企業やアカデミアで培った知見を土台に創業しています。
たとえば、AI企業で知られるPreferred Networksやロボット開発のGITAIなどは、東大・産総研などの研究機関や大手企業出身者によって立ち上げられています。
しかし、オールドメディアなどが発信する情報は、新進気鋭の経営者が新たな技術を元に巨大なベンチャー企業を立ち上げた、などと煽てて無知な挑戦者を増やしては敗者を量産し続けました。
つまりスタートアップがゼロから技術を創出するのではなく、大企業や公的研究機関で蓄積した知や人脈の延長線上で挑戦しているケースがほとんどです。
また、事業化にはベンチャーキャピタルや政府系ファンドの支援が不可欠であり、独力でイノベーションを完結できるスタートアップは稀です。
しかし、そう言った現実には関心が無く、華々しい活躍ばかりが発信されるため間違った解釈が根付いたのかもしれません。
メンバーシップ型雇用が知の蓄積を支えた側面
流動性が低いことがイノベーションを妨げるといわれますが、日本のメンバーシップ型雇用が生んだポジティブな側面も無視できません。
日本企業はかつて、長期雇用と年功序列によって人材を囲い込み、専門性を高めた職人・技術者を社内で育ててきました。
これにより、一つの技術領域を深く掘り下げることが可能となり、精密機械や化学・素材分野での世界的競争力を獲得してきました。
しかし、現代はなぜかこの考えが古臭いと全否定され、多様性・流動性こそが新たな知見をもたらすと考えられてきました。
実際にはそんな事実がなく、一企業に帰属意識の無い社員がいくら流れてこようと、新たな技術や開発に対する責任感など無く、また新たな優良企業が見つかれば勝手に流れていくため、長期にわたる技術開発には向きません。
更に、新たな知見は基礎的な知識があって初めて開かれるわけで、多様性が知見をもたらす事はありません。
その結果、世界で何が起きても日本からイノベーションが起きることは無くなりました。
欧米型のジョブ型雇用や人材の流動性が高い環境では、表面的な汎用スキルは増えても、基礎的な知の蓄積が難しくなるという課題を海外は感じていました。
つまり、日本のメンバーシップ型雇用はイノベーションを起こす可能性が高いと、今は海外に評価され導入され始めているのです。
教育やマインドセット改革だけでは不十分
この議論は、日本でイノベーションが起きにくい構造的な問題を的確に捉えています。
いくら挑戦する精神を育てても、挑戦が報われない制度では意味がありません。
日本では、起業に失敗すれば生活基盤が揺らぎ、再挑戦するにも信用回復や資金調達の壁が大きすぎます。
また、大学や研究機関では短期成果を求める傾向が強まり、長期的な基礎研究が評価されにくくなっています。
企業においても、失敗がキャリアに大きく響く風土が残っており、内部からの革新は進みにくいのが現実です。
つまり、教育やマインドを変えるだけでは、挑戦すること自体がリスクになる構造は変えられません。
にもかかわらず、無責任な発信者は、無限の可能性や起業家マインドなどと言って多くの人間を騙してきました。
本当に必要なのは、再挑戦を可能にする制度整備、長期研究への資金供給、失敗を許容する企業文化など、構造そのものの改革なのです。
日本では実装力と連携設計が欠けている
では、なぜそれほどの研究力や技術蓄積があるにもかかわらず、社会的なイノベーションが生まれにくいのでしょうか。
最大の問題は、成果を社会に実装する構造設計の弱さにあります。
大企業が開発した基礎技術を中小企業や自治体が製品・サービスに落とし込み、社会実装していくという産学官の連携モデルが設計されていないのです。
また、日本では国家戦略としての産業育成が断片化しており、長期ビジョンに基づいて技術や資本、人材を集中投下する仕組みが乏しいのです。
これは、バブル崩壊以後続けられてきた緊縮財政が大きく影響しており、長期的な開発計画が資金提供が受けられず開発が出来ないのです。
各分野での基礎研究が始まらないのだからイノベーションも起きる訳がなく、結局日本は緊縮財政により衰退してしまいました。
文化や精神論にすり替えるのはもうやめよう
日本でイノベーションがなかなか起きない理由を語るとき、しばしば日本人は保守的だから・失敗を恐れる文化がある・挑戦しない国民性といった文化論や精神論に結論が収束してしまう傾向があります。
しかし、これは問題の本質から目を逸らす思考停止の議論に過ぎません。
イノベーションとは、技術革新とそれを社会に実装する構造的プロセスの総体です。
文化的な性質よりも、制度設計・政策・産業構造・資本の流れといった、きわめて現実的なファクターがその成否を分けています。
例えば、欧米や中国では、国家が明確な戦略のもとで産業支援を行い、研究・スタートアップ・大企業・行政が一体となって新しい市場を形成しています。
そこには、挑戦を後押しする資金調達制度、税制、規制緩和、教育制度の連携といった緻密な仕組みが存在します。
一方の日本では、仮に企業が革新的な技術を持っていたとしても、それを社会実装に結びつける横断的な制度設計が不十分です。
研究開発→資金調達→事業化→法整備→社会浸透というプロセスが、縦割り行政や業界慣行の壁に阻まれてしまうのです。
こうした構造的課題を棚上げにし、日本人は失敗を恐れるから、挑戦しない国民性だと文化や精神に原因を求めるのは、責任の所在を曖昧にし、変革の必要性を薄めてしまいます。
変わるべきは文化ではなく、制度と構造そのものなのです。
真に必要なのは、産官学を横断した連携モデルの再構築、そして技術の社会実装に向けた橋渡し役を育成・制度化することです。
それなしに、いくらマインドセットを変えようと訴えても根本的な変化は起きません。
日本のイノベーション停滞の議論において、もう精神論に頼るのは終わりにすべきです。
本質的な課題は構造にある、それを直視して現実的な戦略を描く段階に来ているのです。
まとめ
いかがでしたか?
今回の記事は、もしかしたら多くの人を不快にさせるのかもしれません。
しかし、これまでの常識が間違っていたと理解できれば、本当は何をしなければならなかったのかが見えてきます。
起業は一見華やかに見えますが、現実を良く確かめて本当は何が必要なのかを自分で判断しましょう。
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