2025年5月23日、米国のトランプ大統領がEUに対して最大50%の追加関税を課す方針を表明し、米国株式市場が大きく下落しました。
単なる通商摩擦の一環と見る向きもありますが、その背後にはグローバル経済の見直しというより深い問題意識があると指摘する声も増えています。
グローバル化は、かねてより自由貿易は幻想にすぎず、国家主導の経済政策こそが持続的な成長をもたらすと警鐘を鳴らされてきました。
今回のトランプ関税は、まさにその思想を体現する動きとも言えるでしょう。
この記事では、トランプ政権の真意や経済思想を重ねながら、グローバル経済の限界と今後の投資戦略について考察します。
投資初心者の方にも理解しやすいように、反論や多面的な視点も交えながら解説していきます。
トランプ関税の狙いとは?
2025年5月23日、トランプ大統領がEUに対し最大50%の追加関税を課すと発表し、米国株は下落しました。
表面的には保護主義への回帰と捉えられがちですが、その背後には、グローバル経済の限界を見据えた国家主導型経済への大転換という深い狙いがあります。
トランプ大統領の経済政策はアメリカ・ファースト(米国第一主義)として知られていますが、単なる自国優先ではありません。
彼の本質的な関心は、グローバル経済が生んだ構造的な弱点を明確化させ、特に製造業の空洞化、中間層の没落、地方経済の衰退と格差の拡大を修正することにあります。
このような現象は、1980年代以降の自由貿易推進、グローバル資本の自由な移動、そして過度な外需依存が生んだ副作用であるとも言えます。
さらに、アメリカ経済は長年にわたり、巨額の財政赤字と貿易赤字(双子の赤字)を抱えながら成長を続けてきました。
このモデルは、自国通貨ドルの基軸通貨としての地位に依存しながら、輸入と債務によって消費を維持するという債務主導型経済といわれるものです。
しかし、こうした成長には限界があることが明らかになりつつあります。
実際に、貿易収支の統計を見ると、中国・ドイツ・日本などが貿易黒字を維持している一方で、米国のみが巨額の貿易赤字を計上しています。
これは、世界の輸出先を米国が一手に引き受け続けた結果であり、消費を米国に依存し続けた世界的な歪みが見て取れます。
今回の関税強化は、こうした不安定な経済モデルからの脱却を目指す、実体経済の再構築に向けた一歩とも考えられます。
国内に産業を呼び戻し、戦略的セクター(半導体、エネルギー、医薬品など)を国家主導で強化しようとする動きは、単なる選挙対策ではなく、脱グローバル化と国民経済の再建という明確な意図を感じさせます。
このような姿勢は、自由貿易が常に国益にかなうとは限らないとし、国家による産業政策の重要性を示しています。
今回のトランプ関税は、まさにその思想を政策として具現化したものとも言えるでしょう。
米国は、グローバル競争に勝つのではなく、国家という枠組みの中で誰を守るかを明確にする経済へと移行しようとしているのかもしれません。
グローバリズムは幻想だった?
多くの有識者が長年にわたりグローバリズムの限界を訴えてきました。
その主張の根底には、グローバル経済は本質的に持続不可能であり、国家が主権をもって経済を統制しなければ社会の安定も成長も実現できないと説いています。
自由貿易・市場の効率性・規制緩和といったグローバル経済の価値観は、実は経済成長をもたらさず、むしろ雇用の不安定化や格差の拡大、地域経済の崩壊といった副作用を引き起こしてきたと実際の統計にも出ています。
例えば、1990年代以降の日本は、グローバル競争力を高めるために規制緩和や民営化を推進し、構造改革が繰り返されました。
しかしその結果は、地方の疲弊と若年層の非正規雇用化、企業の内部留保拡大など、国民生活の安定からは程遠いものでした。
つまり、経済学が現実を見誤った結果となったのです。
加えて、グローバル経済では財政赤字=悪という図式が定着していますが、本来は国家には通貨発行権があり、インフレ率の範囲内で財政出動を行うことが経済安定の鍵であると証明されています。
今回のトランプ大統領の関税政策も、このような考え方と共鳴します。
国家の産業を守り、雇用を確保し、経済の主導権を市場ではなく政府が握ると言う思想です。
つまり、経済主権の回復にほかなりません。
この論点は、単なる保護主義やナショナリズムとは異なり、市場に任せれば最適という前提そのものが間違いだったのではないか?という問いかけにあります。
特に現在のように、サプライチェーンの混乱や国際情勢の不安定化が進む中で、国家による戦略的介入が再評価されているのは象徴的です。
グローバリズムの終焉とともに、国家主導の経済運営への回帰する。
有識者達の主張は、その流れをいち早く見抜いていたと言えるかもしれません。
自由貿易の恩恵も無視できない
国家主導の経済政策や保護主義への回帰が注目される一方で、自由貿易のもたらした恩恵も見過ごすことはできません。
特に、日本のように自前資源の開発を放棄した国や輸出産業に依存してきた国にとって、自由な国際貿易の枠組みは経済成長の原動力でした。
これを、輸出主導型経済と言います。
例えば、自動車や電子機器などの輸出産業は、海外市場へのアクセスがあったからこそ成長し、国内の雇用と技術革新を牽引してきました。
グローバルな分業体制のもとで、企業はコスト競争力を高め、低賃金労働の犠牲によって得た国際競争力で消費者は安価で多様な製品を享受できるようになりました。
また、途上国の経済成長にも自由貿易は貢献しています。
貿易の拡大は貧困削減と雇用創出に大きな役割を果たし、世界的な生活水準の向上につながってきました。
過度な保護主義は、自国産業の短期的利益を守る一方で、国際協調の後退や経済の閉鎖性を招く可能性もあるため、バランスの取れた視点が求められます。
脱グローバルと選択的統制の折衷へ
近年、行き過ぎたグローバル化が世界の経済成長を歪め、その不均衡さに米国が我慢の限界を迎える形となりました。
今後の世界は、完全なグローバリズムでも極端な保護主義でもない、脱グローバルと選択的統制の折衷的アプローチへと進むのではないかと考えます。
パンデミックや地政学リスク、サプライチェーンの脆弱性が露呈したことで、多くの国が戦略物資や重要産業に限っては国家の関与を強める方向へシフトしています。
たとえば半導体やエネルギー、安全保障に直結するインフラ分野では、政府が補助金や規制を通じて主導権を握ろうとしています。
一方で、非戦略分野や民間消費財については、依然としてグローバルな分業と競争が維持されているのが実情です。
このような選択的統制の動きは、完全な自由貿易を放棄するわけでも、全面的な経済統制に戻るわけでもありません。
むしろ、国益や安全保障を軸にした柔軟な経済戦略への移行と言えるでしょう。
投資家にとっては、こうした折衷的な流れを読み解き、どの分野が国家主導の支援を受け、どの分野が引き続き国際競争にさらされるのかを見極めることが、今後の重要な判断軸となります。
投資家はどう動くべきか
トランプ大統領による強硬な関税政策や、国家主導型経済への潮流が示すように、今後の世界経済は単純な自由貿易では語れない、戦略的な選別の時代に突入するかもしれません。
これからの投資家に求められるのは、従来のグローバル成長論だけに頼らず、地政学・国家政策・供給網の再編といった非経済的要素を含めて、広範にリスクとチャンスを見極める視点です。
たとえば、国家支援が厚い半導体・エネルギー・防衛関連などのセクターは、政策的追い風を受けて成長が期待されます。
一方で、貿易摩擦の影響を強く受ける業種や地域、またサプライチェーンが海外依存に偏りすぎている企業には注意が必要です。
さらに、金やコモディティといった実物資産やドル以外の通貨資産も、ポートフォリオの多様化として見直されつつあります。
しかし、債務主導型経済でのデメリットは、意識的・無意識的に関わらずバブル経済を作り出してしまうことです。
そのバブルが最も心配される分野が、何の実態も持たない暗号資産です。
世界が統合から分断と選別へと進む中で、柔軟で分散された資産配分こそが、これからの資産形成における最大の防御であり、攻めの一手にもなり得ます。
まとめ
いかがでしたか?
トランプ大統領は、突然おかしな事を始めた訳ではありません。
これまでの常識を覆すにはこれほどのインパクトが必要であるため、そして今後の世界経済を考えての行動です。
しかし、世界はこれをあまり歓迎していません。
ただし、あなたの資産形成が成功するためには、このような大局的視野も必要なのです。
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