「特定口座の税金って、もう戻らないものだと思っていませんか?」
実は、iDeCo(個人型確定拠出年金)の全額所得控除を上手に活用すれば、確定申告によって特定口座で引かれた税金の一部、もしくは全額を取り戻すことが可能です。
たとえば、年間の住民税を43万円、所得税を45万円以内に抑えられるように調整すれば、申告分離課税で源泉徴収された株や投資信託の税金が還付対象になります。
さらに、総合課税で控除しきれなかった分は申告分離課税で再計算されるため、iDeCoを最大限に活用することで特定口座の実質非課税化も夢ではありません。
FIREや転職で収入が減少した年ほど、この節税効果は絶大です。
この記事では、誰でも実践できるiDeCo×確定申告で税金を取り戻す具体的ステップを、分かりやすく解説します。
iDeCoの掛金は全額所得控除
iDeCoの最大の魅力の一つが、掛金が全額所得控除の対象になるという点です。
これはつまり、iDeCoに拠出した金額をそのまま課税対象となる所得から差し引ける仕組みを意味します。
たとえば、年間で24万円(毎月2万円)を拠出した場合、課税所得が24万円減ることになります。
所得税や住民税は課税所得に対して課されるため、その分税金が軽減され、実質的に税金の還付が受けられるような効果があります。
たとえば所得税率10%、住民税率10%の人なら、年間で約4万8千円の節税効果が得られる計算です。
この仕組みは、将来の老後資金を積み立てながら、現役時代の税負担を軽減できるという二重のメリットをもたらします。
しかもこの控除は、会社員、公務員、自営業者など、職業に関係なく受けられる点が特徴です(ただし、職業によって拠出限度額が異なります)。
また、iDeCoは積立期間中の運用益も非課税であるため、通常の投資信託などに比べて効率的に資産を増やすことが可能です。
掛金を拠出するたびに税金が軽くなり、運用益にも税金がかからない。
つまり、節税と資産形成を同時に実現できる制度なのです。
将来の受け取り方次第では、受取時にも公的年金控除や退職所得控除の対象となるため、税制面で極めて優遇された仕組みといえます。
特定口座での税金還付の仕組み
特定口座での税金還付とは、株式や投資信託などの取引で源泉徴収された税金が確定申告によって一部または全額戻ってくる仕組みのことです。
特定口座(源泉徴収あり)では、利益が出た時点で証券会社が自動的に約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)を差し引いて納税します。
しかし、1年間の取引全体で損失が出ていたり、他の証券会社の口座で損益が相殺できる場合には、払いすぎた税金を取り戻すことが可能になります。
たとえば、A社の株で10万円の利益、B社の株で20万円の損失が出た場合、特定口座ごとに源泉徴収されていると、損益通算が自動的に行われません。
このようなケースで確定申告を行い、損益通算を申告すれば、A社で引かれた税金が還付されるのです。また、損失が出た年は繰越控除の制度を利用することで、翌年以降3年間にわたり利益と相殺し、税金を軽減することもできます。
さらに、給与所得などとのバランスによっても還付が発生する場合があります。
たとえば、年間所得が少なく、源泉徴収分の税率が実際の所得税率より高かった場合にはその差額が返金されるのです。
つまり、特定口座の税金還付は払いすぎた税金を取り戻すための手続きであり、確定申告を行うことで投資リターンを最大化できる重要な仕組みといえます。
総合課税と申告分離課税の合わせ技
投資家が知っておくべき裏ワザの一つが、総合課税と申告分離課税の合わせ技です。
通常、株式や投資信託などの譲渡益や配当金は申告分離課税の対象であり、他の所得とは分けて一律20.315%の税率で課税されます。
しかし、確定申告時に一部の配当金を総合課税に切り替えることで、所得控除や税率の調整を活用し、結果的に税金を取り戻すことができるケースがあります。
たとえば、iDeCoを利用して掛金を全額所得控除した場合、課税所得が大きく減少します。
これにより、所得税・住民税の税率が下がるため、配当所得を総合課税で申告すれば、申告分離課税よりも低い税率で済み、結果として税金の一部が還付されることがあります。
つまり、iDeCoで所得を圧縮 → 総合課税で低税率を適用という二段構えが可能なのです。
ただし、総合課税で控除しきれなかった分は申告分離課税の方で再計算されるため、税務上の整合性が取れています。
この合わせ技をうまく使えば、FIREや転職などで一時的に収入が減る年には特に効果的で、特定口座で源泉徴収された税金を確定申告によって還付させることが可能です。
所得控除・課税方式・還付申告の関係を理解することで、同じ運用成果でも手取りを最大化する戦略的な節税が実現できます。
注意点:確定申告で国民健康保険料が上がるリスク
iDeCoの掛金を全額所得控除にしたり、特定口座の税金を還付させるために確定申告を行うことは、節税や還付の面で非常に有効な手段です。
しかし、その一方で見落とされがちな注意点が国民健康保険料の増加リスクです。
特に、会社員を辞めてFIREした人や、転職などで収入が一時的に減っている人はこの影響を受けやすい傾向があります。
国民健康保険料は、前年の総所得金額等をもとに計算されます。
この総所得金額等には、給与所得のほか、配当所得や譲渡所得なども含まれるため、確定申告によって申告分離課税の所得を総合課税に合算した場合、結果的に所得金額が増える形になり、翌年度の保険料が上がる可能性があるのです。
たとえば、iDeCoによる所得控除を活用して所得税や住民税の負担を減らしても、配当や売却益を総合課税にしたことで健康保険料算定上の所得が増加してしまうと、翌年の保険料が数万円単位で上昇することもあります。
特に自治体ごとに算定方式が異なるため、節税で得した分よりも保険料の増加分が上回るケースも存在します。
したがって、確定申告による節税を検討する際には、税金の還付額だけでなく、翌年度の国民健康保険料や介護保険料への影響も含めたトータル負担を計算することが重要です。
税金を減らす戦略と社会保険料を抑える戦略は必ずしも一致しないため、事前に試算しながらバランスを取ることが、賢い資産形成の第一歩となります。
FIRE・転職時は節税チャンスだが慎重に
FIREや転職で一時的に収入が減る年は、確定申告を活用した節税の大きなチャンスです。
所得が少ない年ほど、iDeCoの全額所得控除や配当・譲渡益の総合課税選択が効果的に働き、税率を下げながら還付を受けやすくなります。
特定口座で源泉徴収された税金を確定申告で取り戻すこともでき、実質的に非課税運用に近い効果を得られる場合もあります。
たとえば、会社員時代に積み立てたiDeCo掛金が所得控除として効き、課税所得が減ることで所得税・住民税が軽減されるだけでなく、配当金や株式の売却益を総合課税で申告すると、適用税率が下がり、すでに源泉徴収された分の税金が還付されるケースもあります。
収入の少ない時期には、こうした制度を組み合わせることで節税+還付のダブルメリットが期待できます。
しかし注意すべきは、節税効果が高い一方で、翌年の国民健康保険料や介護保険料が上がるリスクがあることです。
確定申告で総合課税に切り替えると、健康保険料の算定基準である総所得金額等が増加するため、翌年の保険料が上昇する可能性があります。
また、住民税の控除額や自治体ごとの計算方式にも差があるため、想定以上に負担が増えることもあります。
まとめ
いかがでしたか?
会社員などの給与所得者は、基礎控除など所得控除の全てを総合課税分によって消費してしまうため申告分離課税分まで還付を得るのは難しいです。
しかし、iDeCoは老後資金の積み立てと同時に、税金の節約も実現できる非常に優れた制度です。
掛金は全額所得控除の対象となり、給与所得や事業所得などの課税所得を圧縮できるため、所得税・住民税の軽減効果が期待できます。
ただし、節税効果の裏には注意すべきポイントもあります。
確定申告で総合課税を活用すると、翌年の国民健康保険料や介護保険料が増えるリスクがあるため、単純な税金還付だけで判断せず、トータルでの負担を考慮することが重要です。
特にFIREや転職などで一時的に所得が減る年は、節税のチャンスが大きい一方で、社会保険料の増加も見越した計画が求められます。
税制優遇を賢く使いながら資産を育て、将来にわたって安定した資金計画を実現することが、iDeCo成功のポイントと言えるでしょう。
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