- 16日(火)米10月雇用統計発表
- 16日(火)米10月小売売上高発表
- 米国株下落の反転はいつか
これまでの動き
先週の米国株は、FRBの利下げによる期待とAI関連企業の先行き不安が交錯する、非常に示唆に富んだ一週間となりました。
週初は、直前まで続いていた史上最高値圏からの調整局面となり、米国株主要指数はいずれも小幅に下落して取引を終えました。
これは翌週に控えたFOMC(米連邦公開市場委員会)を前に、投資家が積極的なポジションを取りづらかったことが主因です。
翌日も様子見姿勢は続き、指数は方向感の乏しい展開となりましたが、市場の関心はFRBが利下げに踏み切るかどうかにほぼ集中していました。
そして10日、FRBは市場予想通り政策金利0.25%の引き下げを発表し、これを受けて株式市場は明確に反応します。
利下げは企業の資金調達環境を改善させ、株式の理論的価値を押し上げるため、特に金融株や景気敏感株を中心に買いが入りました。
翌日にはこの流れがさらに強まり、S&P500は史上最高の終値水準を更新し、ダウ平均も48,700ドル台まで上昇しました。
一方で、この日から市場の内部では変化が起き始めます。
Oracleの決算および業績見通しが市場の期待を下回ったことで、AI・クラウド関連銘柄に利益確定売りが出始め、ナスダックは相対的に伸び悩みました。
そして週末、その不安は一気に顕在化します。
半導体大手Broadcomが慎重な業績見通しを示したことで株価は一時8%を超える急落となり、AI関連株全体に売りが波及しました。
この結果、S&P500とナスダックは下落に転じた一方、金融やディフェンシブ株の比率が高いダウ平均は比較的底堅く推移しました。
この一週間を通して明確になったのは、米国株は利下げ=全面的な株高とは限らないという現実です。
金融緩和は確かに市場全体の下支えになりますが、同時に企業ごとの業績期待がより厳しく問われる局面に入ったとも言えます。
特に2024年から2025年にかけて株価を大きく押し上げてきたAI関連銘柄は、今後は成長ストーリーだけでなく、実際の利益成長がなければ評価を維持できない段階に入っています。
なぜなら、これまで言われてきたAIへの設備投資過剰が企業のガイダンスを悪化させるまできており、Oracleが発表したデータセンター建設の後ろ倒しや利益率の圧迫などが、企業業績に深刻なダメージを与える所まで来てしまっているのかもしれません。
資産形成を考える投資家にとって、この週の動きは非常に重要な教訓を示しています。
それは、金融政策の追い風が吹いている局面でも、過度に一つのテーマやセクターに集中することはリスクを高めるという点です。
12月第2週の米国株市場は、利下げ相場の始まりと同時に、本当の実力が試される相場への移行を告げた一週間だったと言えるでしょう。
これからの投資戦略
セクターローテーションが落ち着くまで様子見しましょう。
今週の米国株は、前週に実施されたFRB(米連邦準備制度理事会)の利下げ効果を確認しつつ、景気の実力とインフレ再燃リスクを見極める極めて重要な一週間になります。
まず注目されるのは、16日に発表される米国の雇用関連指標です。
市場では、非農業部門雇用者数の増加幅が前回から鈍化するかどうかに関心が集まっており、失業率が4%前後で安定するのか、それとも上昇の兆しを見せるのかが焦点となります。
雇用が強すぎれば利下げは早過ぎたとの見方が浮上し、長期金利が再び上昇する可能性があり、逆に雇用の減速が鮮明になれば、FRBが2026年に向けて追加緩和に動く余地があるとの期待が強まり、株式市場には追い風となります。
続いて18日にはCPI(消費者物価指数)が発表される予定で、FRBの目標である2%を依然として上回っていますが、コアCPIの伸び率がさらに鈍化するかどうかが最大のポイントです。
仮に前年比で低下すれば、インフレ沈静化が進んでいるとの評価から株価にはプラスに働く一方、再加速するようであれば金融緩和期待が後退し、S&P500やナスダックには短期的な調整圧力がかかる可能性があります。
また、今週は企業業績の面でも重要なイベントが控えており、前週にはBroadcomが慎重な業績見通しを示したことで株価が一時8%超下落し、AI・半導体セクター全体が売られましたが、データセンター向け需要の強さや利益率の改善を示せるかどうかで、ナスダック指数のセンチメントは大きく変わる可能性があります。
今週の米国株市場は、指数全体としてはFRB利下げを背景に下値は堅いものの、経済指標の結果次第では日々の変動が大きくなりやすい局面と言えます。
特にAI関連やハイテク株は、金利や業績見通しに対する感応度が高いため、好材料が出れば急反発する一方、失望材料が出れば急落するリスクも抱えています。
資産形成を目的とする投資家にとっては、短期的な値動きに振り回されるよりも、雇用やインフレといったマクロ指標が示す米国経済の方向性を冷静に見極め、分散を意識したポートフォリオを維持することが重要になる一週間だと言えるでしょう。
まとめ
いかがでしたか?
データセンター銘柄の先行き不透明感で、AI関連銘柄や半導体セクターが軒並み急落するAIバブル崩壊の様相を呈してきましたが、今後の企業決算やAIによる収益の改善などポジティブ要因が見られるかが焦点です。
しかし、ここ3年上昇を続けてきた米国株も、根強い割高感からその上昇に限りが見え始めている事で2026年以降の相場を不安視する声が広がっています。
これまでの投資戦略を見直し、2026年は世界に目を向けて投資を行う必要がありそうです。

