「好決算が出たから買ったのに、翌日、株価が下がっていた」
「利上げで暴落すると思っていたら、なぜか上がった」
投資を始めたばかりの頃、こんな経験はありませんか?
ニュースは確かに良かった。
判断も間違っていない気がする。
それなのに、結果は逆。
自分のやり方が悪いのかもと不安になって当然です。
でも、安心してください。
あなたの読みが悪いのではなく、ニュースの見方にひとつ抜けがあっただけかもしれません。
その抜けを埋めてくれるのが、経済学の合理的期待形成仮説です。
名前は難しそうですが、ポイントはニュースの良し悪しより、予想とのズレを見るという一点だけ。
この記事では、次のことが分かります。
- 好決算でも株価が下がる理由
- 織り込み済みという言葉の本当の意味
- ニュースに振り回されないための投資の考え方
専門用語はすべて噛み砕いて説明するので、経済学の知識は不要です。
読み終える頃には、明日のニュースが少し違って見えるはずです。
株価を動かすのは予想外のニュース
合理的期待形成仮説とは、人々が手に入る情報を使い将来を合理的に予測するという考え方です。
市場には多くの投資家が参加していて、決算や金利の行方を発表前から予想しています。
その予想は、すでに株価に反映されています。
これが織り込み済みです。
そのため、発表された内容が予想どおりなら、株価は大きく動きにくいと考えられます。
値動きが生まれるのは、結果が予想を上回ったとき、あるいは下回ったときです。
たとえば、増益というニュースでも、市場の期待に届かなければ株価が下がることがあります。
反対に、減益でも思ったより悪くないと受け止められれば、上がることもあります。
投資で見るべきポイントは、次の1つだけです。
良いか悪いかではなく予想より上か下か。
この見方に切り替えるだけで、ニュースと値動きが逆になる場面にも理由をつけられるようになります。
では、なぜ予想外だけが価格を動かすのでしょうか?
そして、私たちは投資にどう活かせばよいのでしょうか。
合理的期待形成仮説とは?
合理的期待形成仮説とは、人々が利用可能な情報を使って、将来を合理的に予測するという考え方です。
ポイントは次の2つです。
- 人々は、手に入る情報をもとに将来を予測する
- 予測は外れることもあるが、同じ方向に偏った間違いを続けない
全員が必ず正解するという意味ではありません。
外れ方にクセがない、というのが核心です。
この考え方は、1961年に経済学者のジョン・ミュースが提唱しました。
その後、ロバート・ルーカスらがマクロ経済学に取り入れて広まり、ルーカスは1995年にノーベル経済学賞を受賞しています。
従来の適応的期待との違い
以前の経済学では、人は過去の経験をもとに将来を考える適応的期待が主流でした。
| 項目 | 適応的期待 | 合理的期待 |
|---|---|---|
| 予測の材料 | 主に過去の実績 | 過去に加え、現在の情報や政策の中身 |
| 新情報への反応 | ゆっくり修正 | 素早く織り込む |
| 予測の誤り | 同じ方向に続きやすい | 偏りが出にくい |
たとえば政府が景気対策を発表したとします。
適応的期待なら、効果が出てから人々の行動が変わります。
合理的期待では、発表の時点で人々が先回りして動くため、政策の効果が薄れることもあると考えます。
この考え方を投資に当てはめると、予想できる情報はすでに価格に入っているということになります。
だからこそ、ニュースが出た後に慌てて売買しても、有利な価格で取引できるとは限りません。
見るべきは、ニュースの内容そのものより予想とのズレです。
市場予想と異なる情報が価格変動を生む
株価は、発表される前からみんなの予想を含んでいます。
だからこそ、予想どおりの結果が出ても、値動きは小さくなりがちです。
大きく動くのは、予想と結果にズレが生まれたときです。
市場予想と異なる情報が出ると、株価は新しい情報に合わせて素早く修正されます。
ズレが生まれやすい場面は、おおまかに次の3つです。
たとえば決算では、利益の数字だけでなく来期の見通しが予想を下回って株価が下がる、というケースもあります。
数字は良くても、市場が期待していた水準に届くかどうかが問われるのです。
予想できる情報は、すでに価格に入っています。
残る価格変動は、予想できなかった情報、つまり意外性から生まれます。
意外性は、事前に分からないからこそ意外です。
このため、次の予想外を当てて短期売買で勝ち続けることは、プロでも簡単ではないと一般に言われています。
ニュースを見るときは、良いか悪いかではなく次の問いを立ててみてください。
- 市場の予想はどうだったか
- 実績は予想より上か下か
この2点を確認する習慣だけで、値動きの理由が見えやすくなります。
合理的期待形成仮説の限界
ここまで、合理的期待形成仮説が投資を考えるうえで役立つ視点であることをお伝えしてきました。
ただし、この仮説にも限界があります。
万能の理論ではないことを知っておくと、より冷静に投資と向き合えます。
限界1:人は常に合理的とは限らない
この仮説は、人々が情報を合理的に使って予測することを前提にしています。
しかし現実の投資家は、不安や欲、周囲の空気に影響されることがあります。
行動経済学では、人には損を避けたい、みんなと同じ行動をとりたいといった心理的な偏り(バイアス)があると指摘されています。
こうした偏りが、予想や売買に影響する場合があります。
限界2:価格が実態から離れる局面もある
バブルや急落のように、価格が企業の実力から大きくかけ離れる局面も、歴史上たびたび起きてきました。
これらを合理的期待だけで説明できると考えるかどうかは、研究者の間でも意見が分かれています。
少なくとも、市場がいつも正しい価格をつけているとは限らないという見方は、広く知られています。
限界3:情報の質や量には差がある
仮説では、利用可能な情報を使うとされますが、実際には、情報を読み解く力や入手できる情報量は、人によって異なります。
全員が同じ条件で予測しているわけではありません。
まとめ
いかがでしたか?
最後に要点を整理します。
- 合理的期待形成仮説とは、人々が利用可能な情報を使って将来を合理的に予測するという考え方
- 予想できる情報は、すでに価格に織り込まれている
- 株価を動かすのは、ニュースの良し悪しではなく市場予想とのズレ
- 好材料でも予想を下回れば、株価が下がることがある
- 予想外の出来事は事前に読めないため、長期・分散・積立でリスクを抑える考え方が有効
- ただし、この仮説は万能ではなく、ほかの視点も併せて持つことが大切
ニュースと値動きが逆になるのは、あなたの読みが悪いからではありません。
見るべきポイントが、良いか悪いかから予想より上か下かに変わるだけで、市場の動きはぐっと理解しやすくなります。
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