「株を買っているのに、ニュースで相場が荒れるたびに資産が減っていないか不安になる」
そんな経験はありませんか?
実は、数兆円を動かすプロの機関投資家も、相場の急変は避けられません。
それでも彼らが大きく崩れにくいのは、上場株というひとつのかごに資金を預けきっていないからです。
年金基金や大学基金は、上場株のほかに、債券、不動産、未上場企業などへ資金を分けて運用していることが知られています。
しかも、その理由は少しでも多く儲けたいからではありません。
この記事を読み終えるころには、次の3つが分かります。
- プロが上場株だけに頼らない3つの理由
- 個人が真似できること、真似しないほうがよいこと
- 今日からできる、資産形成の第一歩
専門用語は使わず、図表も交えて説明します。
まずは、いちばん大切な結論からお伝えします。
機関投資家は守りながら増やす
機関投資家が上場株だけに投資しない最大の理由は、単一の資産に頼ると値動きの影響を一度に受けてしまうからです。
理由は大きく3つあります。
- 資産ごとに値動きのタイミングが異なり、全体の変動をならせる
- 上場株以外には、異なる収益源や分散効果が期待できる資産がある
- 運用する資金が巨額で、将来の支払い義務に備える必要がある
ここからは、それぞれを具体的に見ていきます。
そもそも機関投資家とは?
機関投資家とは、個人から預かった大きな資金を運用する法人のことです。
代表例は次のとおりです。
- 年金基金(公的年金・企業年金など)
- 生命保険会社・損害保険会社
- 銀行
- 大学などの基金(エンダウメント)
- 投資信託を運用する運用会社
共通するのは、運用が失敗すると、多くの人の生活や将来の給付に影響が及ぶという点です。
そのため、大きく儲けることよりも、安定して運用を続けることが重視される傾向があります。
理由1:値動きの違う資産を組み合わせ揺れを小さくするため
複数の資産を組み合わせると、全体の値動きをなだらかにできる可能性があります。
これが分散投資の基本的な考え方です。
たとえば、株式が大きく下がる局面で、債券や不動産が比較的落ち着いた動きを見せることがあります。
もちろん常にそうなるわけではなく、金融危機のような局面では、あらゆる資産が同時に下落することもあります。
それでも、複数の資産に分けておけば、一つの資産が崩れたら全て終わりという事態は避けやすくなります。
投資の世界では、卵を一つのかごに盛るなという格言がよく知られています。
資産形成において大切なのは、最も儲かる資産を当てることではありません。
どんな環境でも退場せずに続けられる形をつくることです。
機関投資家はこの発想を、巨額の資金で徹底しているといえます。
理由2:上場株以外の資産に異なる収益源があるため
上場株以外の資産は、株式とは異なる性質の収益を生む可能性があります。
機関投資家が組み入れる主な資産を整理します。
| 資産の種類 | 主な収益源 | 特徴 |
|---|---|---|
| 国内外の債券 | 利息、償還益 | 株式より値動きが小さい傾向 |
| 不動産(REITを含む) | 賃料収入、値上がり益 | 安定した収入を得やすい |
| 未上場株式(プライベート・エクイティ) | 企業の成長、売却益 | 流動性が低く、長期保有が前提 |
| インフラ | 利用料収入 | 景気の影響を受けにくいとされる |
| コモディティ(金など) | 価格変動 | インフレ局面で注目される場合がある |
このように、株式の値上がりだけに頼らない収益源を持てる点が、大きな魅力です。
上場株式や債券などの伝統的資産以外への投資は、オルタナティブ投資と呼ばれます。
ただし、注意点もあります。
- 売りたいときにすぐ売れない場合がある(流動性が低い)
- 手数料が比較的高い傾向がある
- 情報が少なく、評価が難しい
機関投資家は専門チームでこれらを調べて判断していますが、個人が同じ手法をそのまま真似するのは難しいのが実情です。
理由3:巨額の資金を運用し将来の支払いに備える必要があるため
機関投資家は、運用資金が巨額であるうえ将来の支払い義務を負っています。
年金基金なら将来の年金給付、保険会社なら保険金の支払いです。
数千億円、数兆円規模の資金を、時価総額の小さな上場株に投じるとどうなるでしょうか?
買うだけで株価が上がり、売るだけで株価が下がるおそれがあります。
そのため、規模の大きな資金は、より広い範囲の資産に分けて運用する必要が出てきます。
機関投資家は、将来この時期にこれだけの資金が必要になるという見通しから、運用の設計を考えます。
短期間で株価が大きく下がる局面でも、支払いは待ってくれません。
この点は個人にも通じます。
教育費や住宅購入など、使う時期が決まっている資金は、株式だけで運用しないほうが安心といえます。
個人の資産形成に活かせる3つのヒント
機関投資家の考え方は、個人の資産形成にも応用できます。
- 使う時期で資金を分ける
当面使うお金、数年後に使うお金、老後に備えるお金を分けて考えます。 - 値動きの異なる資産を組み合わせる
株式だけでなく、債券やREITなども含む投資信託を活用する方法があります。 - 手数料を意識する
長期の運用では、手数料の差が最終的な成果に影響する可能性があります。
個人が分散を手軽に実現する方法として、複数の資産を一つにまとめたバランス型ファンドや、全世界の株式に分散するインデックスファンドがあります。
ただし、どの組み合わせが適しているかは、年齢、収入、リスクに耐えられる度合いによって異なります。
まとめ
いかがでしたか?
機関投資家が上場株だけに投資しないのは、儲けを追いかけるためではなく守りながら増やし続けるためです。
理由は大きく3つありました。
- 値動きの異なる資産を組み合わせ、全体の揺れを小さくするため
- 債券や不動産など、上場株とは別の収益源を持つため
- 巨額の資金を運用し、将来の支払い義務に備える必要があるため
数兆円を動かすプロでさえ、一つの資産に賭けることはしません。
相場がいつ荒れるかを当てることはできないからこそ、どんな局面でも退場しない形を先につくっているのです。
ただし、プロの手法をそのまま真似する必要はありません。
未上場株やオルタナティブ投資は、売りたいときに売れにくく、手数料も高めで、評価も難しい資産です。
個人の資産形成では、まず上場資産の中で分けることから始めるのが現実的でしょう。
たとえば、次の考え方が参考になります。
- 使う時期ごとにお金を分ける(当面の生活費、数年後の資金、老後資金)
- 株式だけでなく、債券やREITなど値動きの異なる資産も検討する
- 長期では差が出やすい手数料を意識する
もちろん、分散すれば損をしないわけではありません。
金融危機のように、多くの資産が同時に下がる局面もあります。
分散はあくまで、値動きの影響をやわらげる手段であり、元本を保証するものではない点にご注意ください。
資産形成で大切なのは、一発逆転の銘柄を探すことではなく、続けられる形を整えることです。
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